事業再構築補助金申請で最も重要な、事業再構築指針の概要について

2021年3月17日に事業再構築補助金申請書の該当要件などが記された事業再構築指針が発表されました。

事業再構築指針の概要を以下に記載しますので、ご参考にしてください。

目次

事業再構築指針を構成する4つの要素

事業再構築指針に該当する内容は大きく

・新分野展開
・事業転換
・業種転換
・業態転換
・事業再編

の5つに分けられます。

どれかに該当していないとそもそも事業再構築補助金に申請できませんので、注意してください。

新分野展開の該当要件

新分野展開とは、主たる業種又は主たる事業を変更することなく新たな製品等を製造等し、新たな市場に進出することを指します。

具体的には

  • 製品等の新規性要件
  • 市場の新規性要件
  • 売上高10%要件(計画時の収支計画で示す必要あり)

の3つ全てを満たした計画が求められます。

製品等の新規性要件

製品等の新規性要件とは以下に示す4つ全てを満たすことが求められます。

  • 過去に製造等実施した実績がないこと

新規性が求められているため、過去に製造した実績があるものは新規とは認められません

  • 製造等に用いる設備を変更すること

思い切った事業展開を実施する内容が事業再構築補助金の主旨となります。
そのため、新規性の要件に、主要設備を新たに導入することが求められます。

  • 競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと

業界標準となっている製品が自社で提供していないため、業界標準の製品提供するといった一般的に主流となっているものは対象となりません。
ただし、業界初など極めて珍しい新規性を求めているわけではない点にも注意が必要です。

  • 定量的に性能又は効能が異なること

製品が性能や効能を定量的に測定できる場合は、性能や効能の違いを説明する必要があります。
・強度や耐久性、軽さ、加工性、容量、速度など数値的に測れるものを指します

製品等の新規性要件の内容は事業再構築補助金に申請する事業計画にマストで入れる必要あり

当然のことなりますが、先ほどの

・過去に製造等実施した実績がないこと
・製造等に用いる設備を変更すること
・競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと
・定量的に性能又は効能が異なること(該当する場合)

の4つは事業再構築補助金を申請していく上で、大きな審査ポイントの1つとなります。

そのため、事業計画を作成する際には、上記4つの項目をしっかりと満たしている点をアピールする必要性があと認識しましょう。

例えば、過去に製造等実施した実績がないことをアピールするのであれば、

・これまで製造等実施してきた実績の記載
・それを踏まえてなぜ過去に製造等実施した実績がない製品の製造を新たに行おうと考えているのか

といった点が求められるのではないかと推察されます。

市場の新規性要件

製品等の新規性要件とは以下に示す2つ全てを満たすことが求められます。

  • 既存製品との代替性が低いこと

市場の新規性を求められているため、新製品投入により、既存製品と同じ顧客や需要を食い合うような計画では該当しません。
つまり、新製品投入により買い上げ点数の増加や客単価の向上など既存製品と相乗効果が生まれる内容が必要です。

  • 既存製品等と新製品等の顧客層が異なること(任意要件)

既存製品と新製品との間に、異なる顧客層を取り込む事業計画であれば、事業再構築補助金の申請において高い評価を受けられます。

既存製品等と新製品等の顧客層が異なる事業計画であるかがポイント

既存製品等と新製品等の顧客層が異なることは、あくまで任意要件となっています。

任意要件ではあるものの、既存製品等と新製品等の顧客層が異なる事業計画だと高い評価を受けられる点を考えると、国としては既存製品等と新製品等の顧客層が異なる計画を暗に指し示していると考えるのが無難です。

顧客層の捉え方としては、

  • 人口統計的区分(年齢・性別・収入・家族構成・学歴・職業・人種など)
  • 地理的区分(国・地域・地域人口密度・気候・政策など)
  • 心理的区分(性格・ライフスタイル・趣味など)
  • 行動的区分(購買層・購買頻度・広告反応度・価格反応度・使用頻度など)

の4つからどれが適しているかを選択しましょう。

その時には、既存製品はどの顧客層であり、新規製品はなぜ既存製品とは異なり代替性が低いと言えるのかについても記載していくことが求められます。

売上高10%要件

10%は申請するための最低条件です。

新たな製品の売上高がより大きな割合となる計画を策定することで、審査においてより高い評価を受けることができる場合があります。

ただし、実現不可能な売上計画の策定は、評価を下げることになります。

また、それ以前に無理やりな計画を立てることは補助金を貰うためだけの計画に成り下がってしまいますし、無理やりな計画ではそれを実現する行動計画との論理性に大きな齟齬が生じてきますので、しっかりと吟味した上で売上計画を策定しましょう。

事業転換の該当要件

事業転換とは、主たる業種又は主たる事業を変更することなく新たな製品等を製造等し、新たな市場に進出することを指します。

具体的には

  • 製品等の新規性要件
  • 市場の新規性要件
  • 売上高構成比要件

の3つ全てを満たした計画が求められます。

製品等の新規性要件と市場の新規性要件は、新分野展開と同様です。

売上高構成比要件

売上高構成比要件とは、

3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製品の属する事業が、売上高構成比の最も高い事業となる計画を策定すること

が求められます。

例えば、日本料理店が新たに事業転換として焼肉店を始めようと計画した場合を挙げてみます。

「日本料理店」と「焼肉店」は、日本標準産業分類の細分類ベースで異なる分類となります。

従って、3年間の事業計画期間終了時点において、焼肉事業の売上構成比が、日本標準産業分類細分類ベースで最も高くなる計画を策定していれば、要件を満たすことになります。

業種転換

事種転換とは、新たな製品等を製造等することにより、主たる業種を変更することなく主たる事業を変更することを指します。

具体的には

  • 製品等の新規性要件
  • 市場の新規性要件
  • 売上高構成比要件

の3つ全てを満たした計画が求められます。

これは、業種転換と同様の要件となります。

業種転換の例

業種転換のイメージがしづらいため、以下に例を挙げます。

日本料理店が、換気の徹底によりコロナの感染リスクが低いとされ、足元業績が好調な焼肉店を新たに開業。
事業計画期間終了時に、焼肉事業の売上高構成比が、標準産業分類の細分類ベースで最も高い事業となる計画を策定

(参考)日本標準産業分類
【大分類】M宿泊業、飲食サービス業⇒【中分類】76飲食店⇒【小分類】762専門料理店
⇒【細分類】7621日本料理店…7623中華料理店、7624ラーメン店、7625焼肉店…(細分類ベースで事業転換)

業態転換

業態転換とは、製品等の製造方法等を相当程度変更することを指します。

具体的には

  • 製造方法等の新規性要件
  • 製品の新規性要件又は設備撤去等又はデジタル活用要件
  • 売上高10%要件(計画時の収支計画で示す必要あり)

の4つ全てを満たした計画が求められます。

製品の新規性要件と売上高10%要件(計画時の収支計画で示す必要あり)は新分野展開と同様です。

製造方法等の新規性要件

製造方法等の新規性要件とは、以下に示す4つ全てを満たすことが求められます。

  • 過去に同じ方法で製造等実施した実績がないこと

新規性が求められているため、過去に同じ方法で製造した実績があるものは新規とは認められません

  • 新たな製造方法等に用いる設備を変更すること

思い切った事業展開を実施する内容が事業再構築補助金の主旨となります。
そのため、新規性の要件に、主要設備を新たに導入することが求められます。

  • 競合他社の多くが既に製造等している製品方法等ではないこと

業界標準となっている製造方法が自社にないため、業界標準の製品方法を導入するといった一般的に主流となっているものは対象となりません。
ただし、業界初など極めて珍しい新規性を求めているわけではない点にも注意が必要です。

  • 定量的に性能又は効能が異なること

製造方法が性能や効能を定量的に測定できる場合は、性能や効能の違いを説明する必要があります。
・生産効率や燃費効率など数値的に測れるものを指します

設備撤去等又はデジタル活用要件

設備撤去等又はデジタル活用要件とは、以下を満たすことが求められます。

既存の設備の撤去や既存の店舗の縮小等を伴うもの又は非対面化、無人化・省人化、自動化、最適化等に資するデジタル技術の活用を伴うものでなければいけません。

先進的なデジタル技術(例えばAI・IoT技術等)を活用する計画を策定することで、審査においてより高い評価を受けることができます。

単にタブレット端末を利用するだけでは要件を満たさず、新たな提供方法のために事業に応じて、必要なデータベースを整備し、在庫管理等に用いるなどカスタマイズすることが必要です。

先進的なデジタル技術を活用した事業計画であるかがポイント

無人化・省人化、自動化、最適化等におけるデジタル技術の活用は最低限の要件となっています。

重要なのは、AIやIoTなど最新のデジタル技術を活用しながら、無人化・省人化、自動化、最適化等を実現できるかを事業再構築補助金の事業計画内で実現していくことが求めらます。

単に、デジタル技術導入だけでは実現性が低く、それらのデジタル技術を活用する人材はどのように育成するのか、組織体制はどうするのかなど、設備(ハード面)だけでなく、人材(ソフト面)などへの言及も必須となると推察されます。

事業再編

事業再編とは、会社法上の組織再編行為((合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)等を行い、新たな事業形態のもとに、新分野展開、事業転換、業種転換又は業態転換のいずれかを行うことを指します。

新分野展開、事業転換、業種転換又は業態転換の要件はこれまでに記載した内容と同様です。

事業再構築指針のまとめ

自社が、事業再構築指針の中で

・新分野展開
・事業転換
・業態転換
・事業再編

のどれに該当するのかまずは見極めましょう。

その上で、該当する項目の要件に合致しているか確認し、該当してれば事業再構築補助金の事業計画書作成を行い、是非とも業績改善・拡大の一手として活用してください。

ただし、事業再構築補助金が欲しいがために、体裁の良い事業計画を策定するのは全く意味がありません。全額補助してもらえるものではなく、一定額は自社で賄う必要があるため、策定しようとしている事業計画は本当に自社のためになるものなかを自問自答することも重要です。

事業再構築指針の詳細が知りたい方は、中小企業庁のHPをご覧になってみてください。

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